前回記事は市販のガラス容器(キュベット)を加熱するユニットを紹介しましたが、今回は容器そのものもオリジナルの「マイクロセル」です。
試料の液体をレーザーで光学分析する際、最近ではごく僅かな量で分析するニーズが増えており、指で摘むくらいに小さく仕立てました。底の白い枠がガラスヒーターユニットで、微量液体が入る容器をカバーガラスと樹脂蓋で固定します(ここでも3Dプリンタが大活躍!)。
この容器、本体は安い刷りガラスで作り、レーザー光が当たる面だけ光学分析用の特殊な専用ガラスにしています。
☆赤い矢印がレーザーの通り道
全部を専用ガラスで製作するよりずっと安価で、しかも接着せずに治具(写真の黒い樹脂クリップ)で固定しているだけなので、汚れたり割れたりしても簡単に交換できます。
レーザー光が当たる面に導電膜を蒸着してガラスヒーターにしたら、ユニットをもっとコンパクトにできそうです。
これ、ガラスヒーター事業としては初めて特許出願しました。
ガラスヒーターの基本的な知財戦略は「見ても分からないもの」(導電膜の配合や蒸着方法など)はパテントにせず門外不出のノウハウにすることです。一方、応用製品は片っ端から展示会やブログで紹介して公知にしたり、または審査未請求で流れてしまった公知の技術を使います。
特許が無いのでマネされても文句言えないわけですが、マネしようにもガラスヒーターができなきゃ何にもなりません。こうやって敢えて特許にしないことで知財を守る道を選んできました。
しかしこのマイクロセルは「見たら分かるもの」で、しかもガラスヒーターとは別構成なので、ノウハウでは知財を守れません。これからいろいろな分析分野に売り込むにも出願だけはしておいたほうが良さそうなので、特許庁に出願しました。それでやっとこのたびのお披露目です。
事業が進むにつれ、事業方針も”進化”してくるのですね。